バイクTOP MCタイチTOP BBS

mctaichi Motorcycle
drz

バイクTOP(その他のメニュー)

クルマ・バイク工学

ターボは燃費が良いのか悪いのか?

○公開:2012-03-04 ○修正:2012-09-14

以前掲示板に書いた記事を、少し改良してこちらに載せます(よってこの記事だけですます調)。

80年代の日本車にはターボ仕様が数多く存在しましたが、バブル崩壊後はターボは悪燃費の象徴としてすっかり姿を消してしまいました。ところが昨今、VWのTSIのように、低燃費を売りにするターボエンジンが登場しました。ターボで燃費が良いとはこれ如何に?

ターボの燃費が悪い理由と良い理由

ターボチャージャーにしろスーパーチャージャーにしろ一般に過給器は、より多くの燃料と空気をシリンダーに送り込む装置です(容積は同じなので高圧になる)。なので、非常に乱暴に言ってしまうと、より大きな排気量のエンジンと同じ事です。では、出力が同じ大排気量の自然吸気エンジン(N/A) と、小排気量ターボエンジンでは何が違うのか?どちらが好燃費なのか?

過給すると燃焼室が高圧/高温になりノッキングを起こすので、これを回避するためにメカ的に圧縮比を下げます。内燃機関の基本原理として、圧縮比と熱効率は比例するので、圧縮比を下げると燃費は悪くなります。その上、燃料の気化熱で燃焼室温度下げるため、燃料を多めに供給するのでさらに燃費は悪化します。これがターボの燃費悪化の理由です。

一方、ターボエンジンが燃費に有利な点もあります。それは先ず、同じパワー/トルクならエンジンの排気量を小さく出来るという事です。勿論、ターボやインタークーラなどの装備が余分に付きますし、高圧/高温に耐えるためエンジン自体も多少丈夫に作る必要はありますが、トータルでは軽量/コンパクトになり、その分燃費が向上します。

また、エンジンには、シリンダとピストン、バルブヘッドとカム、のように擦れている部分が多くあります。エンジンが小さいと言うことは、この擦れている部分の面積が小さいので、内部損失を減らすことが出来ます。これを「褶動抵抗」が小さい」と言います。

さらに、ターボは燃焼で高温高圧になった排ガスを利用してコンプレッサーを回し、その力で吸気圧を高めます。よって、エンジン回転が上がり、ターボがある程度効いてきたら、吸気圧が排気圧を上回ります。これが何を意味するかというと、吸気圧でピストンを押し下げているのであり、エンジンを加勢していることになります。

因みに日本で最初に市販されたターボ車は1970年代末に登場した日産セドリックで、売り文句は時代を反映して「低燃費」でした。その時の理屈が、排ガスのエネルギーを利用しているから、というものでした。

そんな訳で、燃費に有利な点も不利な点も併せ持つターボエンジンですが、おしなべて言えば燃費が悪い方に振れるのが従来のターボエンジンです。

直噴技術が低燃費ターボを生み出した

ではTSIのような最新のターボエンジンは違うのは何か?それは直噴技術です。上述のように、ガソリンターボは混合気が高温/高圧になるため、ノッキングを回避するために圧縮比を低めに設定せざるをえませんでした。

しかし直噴エンジンでは、圧縮しているのはただの大気であり、上死点付近の一番圧力が高まった所で初めて燃焼室に燃料を噴射します。よって圧縮比を高めても、予期せぬ自然着火(つまりノッキング)が起こりません。これにより、TSIエンジンでは9.7という自然吸気並の圧縮比が可能になりました。

ただし、直噴にするためには、何百何千気圧という超高圧の燃料を、何ミリセカンドという精度で噴射出来る高性能インジェクタが必要です。また、瞬時に発生する燃料の渦とその後の燃焼を制御する技術も必要です。つまり、現在の高効率過給エンジンは、こうした燃料噴射技術あってのモノなのです。

それともう一点、あまり触れられませんが、ターボにはポンピングロスの低減という利点があります。

右図は、トルク特性と燃料消費率のグラフですが、等高線で描かれた効率のピーク(青い部分)は、所謂トルク曲線=アクセル全開時の直ぐ下辺りにあります。

しかし、実際の運転ではもっとアクセル開度は小さい為、効率の悪い下の方の領域で普段運転している事になります。これが所謂「ポンピングロス」で、スロットルを絞ることで半分エンブレをかけたような状態で走っているのです。

そうならない為には、もっと小さく非力なエンジンを積み、普段から全開に近い運転をすれば良いのですが、それではもっとトルクが必要な時に困ります。そこで登場するのが、過給の度合いでトルクを制御しようという考え方です。

と言っても、ターボの過給圧はエンジン回転数に比例するので、微調整は出来ません。なので、TSIではスーパーチャージャーを併用し、アクセル開度とエンジン回転数に応じて、ウエストゲートで各過給器の分担を調整しているようです。

低燃費ターボの問題点

TSIの成功を見て、評論家達は「日本メーカーもターボ出せ」なんて言ってますが、そんな簡単な話でしょうか?従来のポン付けターボと違って、TSI並のエンジンを作ろうと思えば、開発費も相当かかるだろうし、高性能パーツなど製造コストもそれなりに高いはず。

TSIの戦略は、同じシリンダブロックを使い、過給圧だけ変えて多くのラインナップをカバーすることです。つまり、部品共用化による利益の拡大です。また、欧州では排気量に比例して税率が変わるため、ターボで見かけの排気量を少なくするという一種のズルとも言えます。

だから、状況の異なる日系メーカは安易に追従すべきではないと思います。低燃費技術は様々で、例えばホンダのIMAはTSIとさほど変わらないコストで、燃費的にもパワー的にも同等以上の成果を出しているのではないでしょうか?だからむしろ、日本メーカーはあれこれ手を出さず、独自の技術に特化すべきだと思います。

Tweet

Facebookアカウントでコメント