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Casioデジタルピアノ・レビュー

【公開】2013-01-28 【修正】2013-12-24

歴史・総論

電子楽器としてのカシオはシンセの黎明期からあって意外と歴史は古いのですが、90年台のデジタルシンセブームに乗れず、子供・ファミリー向けのキーボードメーカー的なポジションに甘んじていました。正直言って、RolandやKorgやYamahaと言ったブランドに対して明らかに格下の扱いですね。

それが、確か10年ほど前に廉価でコンパクトな電子ピアノを出してから人気が出て、他社が似たコンセプトで追従するようになりました。それまでは電子ピアノは楽器店で買うイメージだったものを、今のように家電量販店で多量に扱うようになったのはカシオのお陰だと思います。他のブランドは価格破壊を嫌がってるかもしれませんが、ユーザーの裾野は広がりデジタルピアノの市場は広がったのではないでしょうか?

音質面では、カシオの電子楽器が持っている基本的なキャラクターはやや硬質である意味チープだと思います。これはテクノ系のクリエータにとっては必ずしもマイナスではないのですが、生楽器のリアリティーという点では劣ります。実際、初期のカシオのデジタルピアノは、如何にもプラスチックの箱から出て来る電子音という感じでした。

しかしこの10年の間に確実に進歩していて、音もタッチも初期のチープさは殆どなくなりました。ただ、付属のスピーカーで聴くとあまり判りませんが、ライン録音された演奏を聴くと、まだカリカリと単調で堅い音がしています。恐らくサンプリングしたであろうスタインウェイの音は元々カリカリしていますが、そこから伸びやかさを取り去って更に硬く細くした感じの音に聴こえます。

試奏レビュー

前置きが長くなりましたが、ようやく試奏インプレです。尚、製品情報や価格やショップ在庫等は2013年1月現在の状況です。

参考サイト:カシオ公式製品ラインアップ サウンドハウス(相場の確認と製品同士の比較の為の参照であり、通販最安値とは限りません)

PX-750

このモデルが最も売れ筋だと思うので、これを基準に他のモデルは何処が違うのかを説明します。

音質

カシオの電子楽器のキャラと、収録波形(おそらくスタイウェイ)のミックスにより、比較的カラッとしたサウンド。

低音部の濁りが少なく率直な音色だが、音数が少ないとやや味気ないか?特に高音部のサステインは、ヤマハやカワイの電子ピアノに比べると短く「コーン」というチープな音。繊細さや音の広がりに欠ける。

また、エレピなどピアノ以外のサウンドはさらにハッキリとチープで、子供用キーボードから出てるような感じ。

鍵盤

今回のモデルチェンジで最も変わったのが鍵盤だと思う。従来モデル(PX-735)は表面がツルツルの材質で、しかもカチャカチャと薄っぺらい感触だったが、このモデルから象牙調のザラッとした感触になった。ただ、ローランドやカワイあるいはかつての上位機種PX-830のような繊細な象牙調ではなく、凹凸が目で見えるほど荒く明らかに人工的。もっとも、演奏して違和感は無くちゃんと鍵盤の滑りも防止している。

タッチ(アクション)そのものは従来モデルと変わってないと思う。やや軽めの部類で変な抵抗感はなく全般的に率直で妥当なタッチだと思う。ただ、クリック感は全くないし、鍵盤保持力は割と重い(個人的にはマイナス)。

総評

鍵盤は従来モデルの最大の弱点だったと思うので、それが改善されたのは大きい。ただ、定価88,000円というのはカシオのPriviaとしては結構高くなったなあという印象。サウンドハウスでは59,000円となっているが、PX-830が残っていれば同じ値段で売られているのでそれなら830の方が僕は良い気がする。

PX-150

これが現行の最廉価モデルで、これだけはスタンドはオプションのキーボードタイプ。鍵盤は上位機種と同様に象牙調仕上げになった。ハンマーアクションと音源も上位機種と同じ。違うのはスピーカーで、最もチープで割れたような音がする。折角の音源もこれでは表現しづらい。

価格はSHで38,000円とPX-750より2万円強安いという微妙な設定。別売り純正スタンド8,800円を買う位ならPX-750に行っても良さそうな気がするが、別途汎用スタンドを持っているならヘッドフォン前提と割り切ってPX-150かなあ。

PX-830

確か2012年の秋ごろに生産中止になっている、現行でいうとPX-850に相当する機種。音源そのものは現行モデルと多分同じで、違うのはスピーカー。結果として、750以上850以下という感じ。つまり微妙。

鍵盤アクションも変わらないが、このモデルが傑出しているのは鍵盤表面の材質で、ややザラッとしていてかつしっとり。現行モデルは上位機種も含め、この鍵盤が無くなってしまったのは惜しい。上に書いたように、未だ在庫があればPX-750と同じ価格なのでお買い得だと思う。

PX-850

現行の中間機種。下位機種のPX-750との違いは主に天板付きの高出力スピーカー。音の違いとしては、PX-750がやや軽くカリッとした高音よりなのに対して、これは比較的低音寄りでしっとりした感じ。強めに弾いてもスピーカーやボディーのビビリ感が無い天板開ベダルを支えている構造もPX-750よりしっかりしているので、ペダルを踏んでグニャグニャすることがない。

定価は12万円もするが、サウンドハウス価格は78,000円。PX-750との価格差2万円弱はこれまた絶妙(微妙)な設定で、何方を選ぶか悩ましい。もっとも、PX850は色がブラックしか無いので、白や茶色を選びたければ750しかないが。僕なら上述のようにPX-830が買えるうちはそれにするけど、それが無くなった上に今後価格差が詰まって15,000円位になったら850の方を選ぶと思う。

AP-450

これだけはCelvoanoというラインアップになる。上記Previaシリーズとの違いはボディーの奥行きがやや長く豪華(?)なこと。この機種の基本構造はPX-850で、違いはスピーカ天板の手前に10cmほどの開かない天板があるのと、スタンド左右の足が2ピース構造になっているのと、操作パネルにマーブル調のしぼ(豪華というよりやや悪趣味)が付いてるくらい。それ以外は実物をチェックしてもカタログを読んでも違いが見当たらない。

ボディーの奥行きが長いからと言って、長い鍵盤を使ってるわけでも無さそうだし、スピーカーの配置やスペックも同じ。勿論出音も変わらないのだが、見た目の通り奥まったところから音が出ているのは判る。でもそれが何?という訳で、この機種の存在意義がよく分からない。SH価格はPX-850より1.1万円高い89,000円。「格調高いエレガントなキャビネット」には見えないので、どうしても天板に物を置きたい人向けか?

所見

こうしてちゃんと通販価格を調べてみると、カシオも高くなったなあという印象です。こうなると最早、コストパキングの座はコルグに譲った感があります。と言っても、内容に対する価格は今でも決して高い方ではありませんが。

同様に気付いたのは、カシオは品質も価格帯もレンジが狭いということです。他のブランドなら、5万円以下のチープシックなモデルから、30万円以上の超高級モデルまで実に幅広いですが、カシオの場合はボトムラインの品質は向上したけど、その少し上のPX-850が実質的な最上位機種。基本的な音(波形)と鍵盤(アクション)は一種類だけです。

とは言え、失礼ながらカシオが高級路線に走って成功するとも思えないし、幅広い商品開発をするには企業体力的にキツイと思います。なので、デジタルピアノはPX-850くらいまでにしておいて、チープさを逆手に取ったファンキーなミュージックBOX的な何か(何じゃそりゃ?)を開発するのはどうかと。

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