Grinta 100 (Tour) lite::MCタイチ.com

Slim gut by tennis

ラケットインプレなど

Grinta 100 (Tour) lite

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今回初めて取り上げるのは、スノワート(Snauwaert)というブランドのラケットです。この会社は、ウッドラケットの時代にはトップメーカーの一つでしたが、カーボン時代に入ると撤退してしまい、30年の歳月を経た2016年に突如復活したそうです(出典)。日本では2019年頃から売られていたようですが、僕はリアル店舗で見た事が無く、偶々通ってるスクールの試打会で初めて知りました。

スノワートジャパンという日本の代理店もあるようですが、2021年8月現在公式サイトはどうやら無く、公式ツイッターで代用してるみたいですね。

概要/スペック

初めて取り上げるブランドのラケットなので、先ず概要を説明します。スノワートのテニスラケットは下のチャートのように5つのシリーズが有り、左に行くほど面が小さくコントロール重視、右へ行くほど面が大きくパワー重視だそうです。

で今回レビューするのは左から2番目のGrinta100(本家サイト)というシリーズのライトモデル Grinta 100 Lite (A1スポーツ)とそのツアーモデルであるGrinta 100 Tour Liteです。実は本家サイトにはこのライトモデルの記載が無いので、日本専用モデルかも知れません。上述のようにスノワートジャパンの公式サイトは無いので、扱いショップの商品ページにリンクしています。

勿論ノーマルのGrinta100も打ってみたかったのですが、何故か僕のスクールには試打ラケットが無かったので、レビューはLiteだけです。また借りて家に持ち帰る事は出来ないので実測データもありませんが、スペックだけ他社のラケットと一緒に載せておきます。

製品名重量バランスフレーム厚重量(実測)バランス(実測)
Grinta 100 305g  315mm 22-23.7-23mm    
Grinta 100 Lite 285g  335mm    
Grinta 100 Tour 305g  315mm    
Grinta 100 Tour Lite 285g  330mm  ↑     
Vcore100 2021 300g 320mm 24-25-22mm 320g 326mm
Vcore98 2021 305g 315mm 22.5-23-21mm 332g 319mm
CX400 Tour 300g 320mm 23.0mm  322g 324mm
EZONE 100 300g  320mm 23.5/26/22mm 315g 326mm

先ずGrinta100のノーマルとTourの違いですが、ストリングパタンが違います。ノーマルは16*18で横糸が通常より1本少ないパタンですが、Tourは通常の16*19です。またノーマルにはSGTという円錐形状の穴でガットを動き易くしたグロメットが3時-9時方向に搭載されていますが、Tourには有りません。

これによりノーマルはガット面を撓みやすくして柔らかさやホールド感を出し、Tourは普通のストリングパタンとグロメットで比較的しっかり感を狙ったものと想像できます。実際の打感はこの後すぐ!

右がノーマルのLiteで左がTourのLiteです。写真で直ぐ判るのはグリップの色の違いだけですが、トップのバンパーがノーマルは黒でTourは挿し色であるオレンジになっています。

張ってあったガットは何方も同社のサニーコア125(ペンテイ氏のレビュー)というものでテンションは多分50ポンド弱でしょう。このガットは黄色いナイロンマルチに透明のポリのコーティングがしてあるそうで、打感としてはナイロンに近いようです。

試打レビュー

先ず持って振った感じはライトモデルにしては極端に軽い訳でも極端にトップヘビーな訳でもありませんでした。軽くボールをリフティングをすると、Grinta100 Liteは非常に柔らかくボールがラケットに吸い付く感じ。こんな感触を味わったのは17mm厚のピュアな薄ラケ以来な気がします。Tourの方はノーマルと比べると撓み感が少なくしっかりした打感ですが、他社の黄金スペックと比べたら甲高い振動が皆無で全然柔らかい印象です。

ただ、打ち込んでいくにつれ両者の違いは小さくなり、ちゃんと意識してないとどっちがどっちか良く判らなくなってしまうほどです。ただやはりノーマルの方がホールド感やスピンの掛けやすさは感じられるので、ここから先はノーマル(Grinta100 Lite)のレビューをします。

先ずストロークですが、パワーアシストが絶妙で多すぎず少なすぎず、楽に打てるのに反発系のように暴発する気配はありません。フレームのしなりとリムやガット面の撓みが何方も突出することなくバランスよくミックスされた柔らかさがあり、非常にナチュラルでコントローラブルです。ホールド感があるのでスピンもかけやすく、低くて浅いボールを擦り上げて相手のコートに収めるようなショットも容易です。一方で、高く浮いたボールをフラット気味に叩いても暴発しないし痛い振動もありません。

何より素晴らしいのは、オフセンターでヒットしても面ブレが少なく、ボールのパワーや方向性があまり損なわれない事です。メーカーも「スイートスポットを外した時にこそ仕事をするフレーム」を謳っていますが正にその通り。極端な話、ガシャリ気味に打っても、面をしっかり作って押し出せば大抵は相手のコートに入ってしまうと思います。そういうボールは意外と相手にとってはタイミングを外されて返しにくく、時々エースになったりするので「計算通り」と言って笑いを取ることも出来ます。

ぶっちゃけ我々のようなアマチュアがラケットのパワー不足やフレームの硬さを感じるのは、ちゃんと当たってないからでしょう。逆にちゃんと当たったらあったで今度はパワーが出過ぎてコントロールし辛いと感じたり。だからこのラケットのように、スウィートスポットで捉えても凄く飛ぶわけではないが、外しても極端にブレない。何処で当てても結果があまり変わらないというロバスト性の高さは、きわめて実践的で合理的だと思います。

ブレないフレームは通常高剛性であり、振動が大きく腕に厳しい事が多いですがこのフレームは全く逆で、振動止めを一切使っていないのに痛い振動が有りません。これはきっとYonexのような振動吸収材が入っているのだろうと思いきや、特に何も入っていないそうです。スノワートによると東レのカーボン繊維でしなやかで柔らかいものを使用し、あとはフレームの断面形状のデザインでしなりとブレの少なさを実現しているそうです。他社は高反発のカーボン繊維を使ったり、逆に振動吸収素材を使っている事を訴求しますが、それってある種のマッチポンプなのかも知れません。

また、黄金スペックの割には(空力的にも)振り抜きが良いのでサーブも打ちやすく、おまけにスピンも掛けやすいのでスピンサーブがとても打ちやすいです。勿論、上述のようにミスヒット耐性が高いので、サーブが安定します。

まとめ

大昔にウッドラケットを作っていたというだけで、実質的には新参のこのメーカーがここまで完成度の高いラケットを出してくるのはちょっとした衝撃です。またそれを上質なカーボン繊維と断面形状のデザインだけで実現してしまうのは目から鱗というか、逆に他社のこれまでの様々な新技術は一体何だったのか?と言いたくなります。

ただ価格を調べると更なる驚きが(;'∀') 定価は他社に倣って3万円ちょいかと思いきや、何と36,000円台(ツアーは37,000円台)。スクールでもネットショップでも、ラケットは定価から2割引きでガット&張り代無料のキャンペーンをやっていますが、それでも3万円を僅かに切る程度。スクールのコーチも「スノワートは値段が下がる売り方はしない」と言っていましたが、それだとシェアは伸びない→スケールメリットが出ない→卸価格を下げられないという悪循環になりそうな気が…

単一素材しか使ってないならコストは下がる筈ですが、数が見込めない分素材購入単価が高めになったり、中国のファウンドリーに製造を委託するにも製品単価が高くなってしまうんでしょうか?まあ大手ブランドのように多額の宣伝費を使って売りまくって製造単価を下げるというやり方は無理なので、少なくとも当面は「知る人ぞ知る」的な商法になるのは致し方なしか。製品やコンセプトが良いだけにもっとメジャーになって欲しいですが、それまでは本体1.6万円の投げ売りBladeを使いつつ気長に待っていたいと思います(;^_^A